ゴジラ対ヘドラ(1971)

「ゴジラ対ヘドラ」(1971)
ゴジラ対ヘドラ



親から聞いた話では、僕が初めて映画館で観た映画は「キングコングの逆襲」(下写真/左)だそうだが、正直言ってまったく憶えていない。父が言うには、同時上映の「劇場版・ウルトラマン」が始まると、館内の子供達と一緒にウルトラマンの歌を元気に歌っていたそうだ。
計算によると、その時僕は5歳だったはずだ。

その後、子供のおねだりをほぼ全て却下する両親の方針の下、ほとんど奇跡的に連れて行って貰った唯一の映画がこれだ。観たのは上野東宝だった。
「ゴジラ対ヘドラ」と「ガメラ対深海怪獣ジグラ」のどちらかを見せてくれるというので、子供なりに計算した結果、ゴジラを見せて貰って、帰りにガメラの"ソノシート"(知らない子はお父さんに聞いてみよう!)を買って貰うという、すばらしい作戦を思いついたのだけれど...

映画を観てちょっとがっかり。だって、暗いんだもの。...他の怪獣なんにも出ないし。ゴジラが空を飛んだのを見て「おお、今度ラドンと戦う時は使えるかもねっ!」と思った以外は、どこかポカーンと観ていたっけ。
しかも出口に貼ってあったのは、なんと次回作「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」の予告ポスター。(下写真/右)
「ええーーーっ! キングギドラ出るじゃん!アンギラス出るじゃん!....」それはもう大ショックだった。『ああ、連れてきて貰うのが1回早過ぎた....(泣)』
でも、何故か不思議と印象に残る映画だった。もう一度観たいとは思わないのに、何かが恋しい。あの時、映画館で「ゴジラ」を観るという、説明のできない何かを体感してしまったのだと思う。
その時、僕は9歳だった。

その後は(半ば強制的に?)怪獣離れして大人になっていったが、1984年に「ゴジラ」が復活した時、僕はその「ゴジラ」をどうしても上野東宝で観たいと思ったのだった。(一応、先に"蹂躙される"場所に敬意を表して有楽町で観たけど。)
その時、僕は21歳。社会に出て半年だった。
13年振りに訪れた上野東宝は僕の予想を超えて遙かに古ぼけていた。椅子はへたり、かつて「ゴジラ対ガイガン」のポスターを貼っていた壁は煤けて、記憶よりもずっと小さい建物だった。
訪れたのは正しかったのだろうか?と悩みつつも、「ゴジラ1984」を観た。スクリーンも音響も迫力不足で、せっかくのゴジラ最新作がまるで大きな古いTVのようになってしまったが、僕はそれなりに満足して帰った。

そして2年前、上野東宝は閉館した。
「ゴジラ対ヘドラ」のサイケデリックな雰囲気やゴーゴーの熱気と思い出も、上野東宝の建物とともに昭和レトロの彼方に消えていった。
やっぱり、ちょっと寂しかった。



キングコングの逆襲ゴジラ対ガイガン



※蛇足だけど、「ゴジラ対ヘドラ」はゴジラシリーズ"第11作"なのだった。


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